「プル型」営業という盲信

時代は訪問販売、いわゆる押し売りやテレマーケティングなどを嫌う傾向にあります。それは「プライバシー」や「セキュリティ」がより重視される時代に変わったということでもあります。

ですが、どのような時代になろうと「ビジネス」の根幹は変わりません。売りたいもの、買ってほしいものを売りさばき、期待している収益を確保するのが大切です。そのために営業したり販促をしたり、その土壌をつくるためにプロモーションを展開したりするのですが、それらの手法、また営業のスタイルとして「プル型営業」というものが一般的になりつつあります。それはこちらから出向くのではなく、相手に「来てもらう」という営業手法です。

こちらから押しかけたり、しつこく営業したりしてしまっては相手が引いてしまうかもしれない、最悪の場合二度とアプローチできなくなってしまうかもしれないのです。そのような状況になると、貴重な見込み顧客を削ってしまうことになりかねません。だからそのようなことにならないように、「相手に選んでもらう」ということを通じて、相手が自分でコンタクトをとって来たという形式をアレンジすることで、「しつこくない」営業状況を再現しようというものです。

ただ、そのようなスタイルが独り歩きしすぎて、「今は営業しない時代だ」という間違った解釈になりかねません。その間違った解釈では、「黙っていたら買ってくれるのだろう」という考えに至ってしまうことが多いのです。そして結果「営業力が低下する」という事態に陥ることになります。営業力というものはビジネスにおいての「攻撃力」です。「売る」ではなく「買ってくれる」という盲信が、さまざまな誤解を生み、さまざまな弊害を生んでいるのです。「こちらから積極的に営業はするべきではない」だとか、「押し付けるのはよくない」だとか、昨今多くなっているといわれる「草食系」のような状態にビジネススタイルが陥るのです。

それは大きな間違いであり、プル型営業の真髄は「そのような状態をアレンジする」というところになります。

つまり、顧客が「自分で選んだ」という「納得感」を持つことができるようにするということ、「自分の意志」で、そのような選択をしたのであれば、「押し付けられた」わけではないので、自然とその商品、その商談を受け入れられるだろうということです。

それは「仕組む」ことです。本当に選んでもらおうということではないのです。顧客が自分で選んだ、数ある選択肢の中から、さまざまな情報を得て自分で「決めた」という状況が生まれやすいように網を張ることは、「ただ待つ」ということとは全然違います。ただ待っているだけでは何も発生するわけがなく、周到に網を張り巡らして、飛び込んできたチャンスを逃さないという強固な意志の元営業を行うことで、はじめて「成果」が得られるのです。「押してはいけない」、「ただ待っているだけ」、「商品がよければいつかは買ってもらえる」という「受け」の姿勢では、何も達せられることはないでしょう。

「プル型営業」というものは、「状況」のことです。そのような状況をうまく演出することができるかどうかは、販促マンの腕にかかっているのです。

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