1件のオーダーの価値を定めること
ROASは、一件のオーダーに対して投じた費用と売上の比率を管理するものです。ROASを管理することで、一オーダー単位で「赤字になっていないかどうか」ということを判断することができます。
ただ、低単価の商材しかない場合、さらには「継続的なサービス」などの販促を行なっている場合、一件あたりのROASの計算だけでは成立しないこともあります。そのような場合は擬似的に「一件のオーダーの価値」を考える必要があります。それは獲得しているものが「成約」ではなく、問い合わせなどの「情報」である場合に必要なことです。
最終着地点は顧客から集金することであり、その代わりに商品やサービスを提供することではあるのですが、高額商品や役務などのサービスの場合、その先に「営業」があるかもしれません。営業は営業でそのようにして降りてきた問い合わせなどの「情報」に対しての「成約率」を考えているものなのですが、それは「全件決まる」ということではないのが通常です。そこにはアベレージとして「何件情報があれば何件決まる」ということが考えられるもので、ある程度数値化できているはずです。
予算を投じてそれらの「情報」を確保するのであれば、その「一獲得」の価値を考える必要があります。そうしなれば、投じた予算に対して成果がどうだったのかがわからないのです。もともと、そのようにして「一件に対していくらまで」という「CPA」、つまりコストパーアクションが設定されている場合はそれを順守する必要があるのですが、物販など一時的な売上を発生させるプロモーションでは、その先に「どれだけの人がリピートするのか」という指標があったりするもので、そのような場合は「予算をかけて獲得するオーダーは赤字でも構わない」ということになるかもしれません。
販促のひとつのスタンスとして「新規の顧客」を獲得するという命題が課せられている場合もあります。そのような場合は「ROAS」ではない指標でプロモーションを展開することもあるでしょう。どのような場合でもそこにあるのは「一件の獲得」に対する「価値」の設定です。価値あるものを、対価を支払って獲得しているということです。
そのような「数字」に対するこだわりは、販促マンにとっては必ず必要な意識です。自分はいくら稼いでいるのか、自分はいくら使って、どれだけのモノを会社に残しているのかということです。それは各個人の「生産性」ということになります。ひとりひとりの生産性を上げることが企業にとっての死活問題であり、そのための組織であり、経営方針であり、施策であり、従業員ひとりひとりの給与なわけです。
一件のオーダーの価値を知る。たとえそれが直接的な売上でなかったとしても、一件のオーダーを売上に換算してみるということが大切です。資料請求などの問い合わせにしても、それらのひとつひとつはアベレージとして「いくらになるのか」ということを知ることが大切です。大前提は販促で獲得するものは「価値がある」という意識です。すべての仕事は生産性がなければいけません。ムダな仕事が存在しているとしたら、それは企業にとって「悪」なのです。企業にとって健全ではないことは駆逐されるべき運命なのです。